霞ヶ関ビルは1968年に竣工した日本初の超高層ビルとして、つとに有名であるが、30年後に大規模な改修工事を行った。
改修工事の内容は多岐にわたるが、その中でもIT改修が重要なテーマだった。
きっと霞ヶ関ビルの設計をしていた1965年頃は、パソコンが一人一台配られて、世界中がインターネットで繋がれた現在のオフィス環境は誰も考えていなかっただろうし、もし予測していた人がいたとしても誰も耳を傾けなかったに違いない。
手書きの伝票を切ったり張ったり、書類の複写はカーボン紙で、最悪手書きで丸写し、資料室の中は紙の書類で溢れ帰り、資料探しに丸一日・・・みたいな時代だったんだろうなと思う。
そして、時代と共にみるみるIT機器が増殖して、あっというまに電気の容量が足りなくなり、ブレーカーがすぐ落ちる、機器が発生する膨大な熱を冷ますために冬場でも冷房が必要になるほどだから、夏場なんてえらいことになってしまった。
ついに対処療法的な対応では限界がきてしまい、そもそも建物本体の設備環境を見直さざるを得なくなったのだ。
いま、日本中で、いや世界中で古いビルの電気容量が不足し、壁に床に通信ケーブルが這い回り、空調に不満が噴出するような事態が発生しているはずである。
僕たちが今、改修設計で手がけている施設も押して知るべし。
床下はえらいことになっている。
建築を取り巻く環境は、時代とともに移り変わる社会環境の変化と密接に結びついていることを改めて痛感した次第なのだ。